2024年度スタディツアーとリフレッシュプログラム報告

昨年、2024年の福島スタディツアーとリフレッシュプログラムの報告です。

8月9日-10日:リフレッシュプログラム

今年のリフレッシュプログラムは、8月9日ー10日、山形県大江町にある「やまさぁーべ」で開催しました。小学生と中学生17人、スタッフ13人、総勢30人で2日間のプログラムを楽しみました。「こらっせ」ユースの感想です。

8月9日

バスレクで笑顔

「こらっせ」のみんなとは、東京駅で集まりました。初めてお会いする方もいましたが、新幹線の中で名前シールをつくったり、スケジュールについて話し合ったりする中で、打ち解けることができました。バスが子ども施設に到着したら、早速出発式です。福島スタディツアーの際に遊んだ子どもたちの顔が蘇ってきました。朝早いこともあって、まだみんな緊張している顔つきです。
バスでは、準備をしていたバスレクを行いました。まずは、自己紹介です。名前と一緒に好きな色、食べ物、動物をそれぞれ発表しました。次にいよいよレクです。「おーちた、おちた」「私は誰でしょうクイズ」「私は誰でしょうクイズ〜みんなversion〜」の3つをしました。「おーちた、おちた」では、簡単な体の動きがあるためか、自然と心も体もほぐれて、笑顔が見られるようになりました。一気に賑やかになったような気がします。また、「私は誰でしょうクイズ」では、難易度を幅広く準備したことで、小学校低学年の子から中学生まで意欲的に手を挙げて答えてくれて、嬉しかったです。最後には、自己紹介の時にメモしていた、好きな色、食べ物、動物をヒントにして「私は誰でしょうクイズ〜みんなversion〜」をしました。クイズを出すと、「えー!誰だったっけ!」と、一生懸命思い出そうとして、頑張っていました。
「やまさぁーべ」に到着するころには、「こらっせ」スタッフ・ボランティアと子どもたちの距離がだいぶ縮まりました。わくわく楽しい二日間の幕開けです。(林 千陽)

ウォータースライダー

「やまさぁーべ」に到着した私たちの最初のイベントは、ウォータースライダー。自然の中のウォータースライダーは、傾斜のある地面にシートを敷き、そこに水を流したものでした。ウォータースライダーを上がると、下から見るよりも高く、傾斜も急に感じ、初めは恐怖で誰も動きませんでした。一歩を踏み出すことがとても大きく感じたのです。そんな子どもたちを見たササパン(「やまさぁーべ」館長)は、自らが勢いよく滑ることで子どもたちに見本を示してくれました。ササパンの見本を見ると、なにか吹っ切れたように子どもたちは一斉に最初の一歩を踏み出し、続々と滑り始めるようになりました。好奇心が恐怖心に打勝った瞬間でした。ササパン見本で安心感も得たのだと思います。また、アブが心配されていましたが、恐怖に打ち勝った勇敢なみんなは、大量に攻撃してくるアブさえ恐れず楽しさに変えました。自然を、足や腹だけでなく、五感を用いて味わうことができ、一人ひとり、最高の笑顔が見られたと思います。さらに、ひとつの恐怖や壁を共に乗り越えた私たちは、ここで大きく関係を築くことができました。
ウォータースライダーを遊び尽くした私たちが次に行ったのは、スイカ割りでした。目隠しをして、初めは戸惑いが見られましたが、仲間の「前、前!」という言葉を信じ、前に進みます。木の棒がスイカに当たり始めると、場はさらに盛り上がり始め、みんなの掛け声が一層大きくなりました。人を信じることはなかなか難しいことですが、スイカ割りを通して、周りの声を信頼するというハードルが下がったように見えました。ウォータースライダーで築いた関係も生きたような気がします。(岩城千晴)

火起こしとカレー作り

ウォータースライダーやスイカ割りを楽しんだあとは、みんなで夕食のカレー作りをしました。大人も子どもも混じってグループに分かれ、カレーを作るための火起こしから始めます。
最初は薪割りから。薪割りはクラッカーという器具を使用するやり方と、鉈を使用するやり方の二種類行いました。割りやすい薪の選び方、割る時のコツを教えてもらい、私達の腕よりもずっと太い薪を、割り箸のように細くなるまで繰り返し割っていきます。鉈を使用するやり方では、太い薪を割るのは難しく、子どもたちも苦戦していました。その分、みんなで協力して割ることができたときは達成感がありました。
薪が用意できたら、次は火起こしに入ります。程よくほぐした麻紐を鉄板の上に置き、道具を使って着火します。火がついたらすぐに新聞紙をかぶせ、その上に細い薪を組んで火を大きくしていきます。このとき、燃えている中心部分に風が入っていくよう、上に向かって組んでいくのがしっかりとした火を起こすコツだとか。私達のグループはなかなかうまくいかず悪戦苦闘しましたが、早いところは一回で成功し、順調に火を育てていきました。


火起こしができたらいよいよカレー作りです。燃えた薪を使い、やまさぁーべの方々に準備していただいた材料を鍋で煮ていきます。子どもたちも、火が弱くならないよう息を吹きかけたり、焦げつかないようにかき混ぜたりして、「早くできないかな」と完成を心待ちにしていました。


そうして自分たちで火起こしから始めて作ったカレーは、甘口の程よい濃さと野菜の柔らかさでとっても美味しかったです。子どもたちも、普段はあまり食べないという子もみんなたくさん食べてくれました。食後のデザートに食べたスイカ割りのスイカも、さっぱり甘くてとても美味しかったです。めったにできない体験に加え、美味しい思いをできたことは、子どもたちにとっても素晴らしい思い出になったようでした。(井手美由希)

体育館遊び、星・花火

夜ごはんを食べた後は、「やまさぁーべ」にある体育館で遊びました。卓球やバスケ、キャッチボールなど、自分の好きな遊びでたくさん体を動かしました。特に子どもたちが、周りにいる人に「これで一緒に遊ぼうよ!」とたくさん話しかけていたことが印象に残っています。子どもたちと一緒に遊ぶことで、より関係を築くことが出来ました。さらに、音楽室にはピアノやドラムなどたくさんの楽器がありました。集中してドラムを叩く子どもや、ピアノを弾く子どももいました。
体育館遊びの後にはみんなで外に出て、星を観察しました。夜空には遮るものが何もなく、満天の星空を楽しむことが出来ました。子どもたちも、たくさんの星を観察して楽しんでいる様子でした。 星空を楽しんだ後は、花火をしました。手持ち花火では、光が勢いよく出る様子にびっくりしながらも、楽しんでいました。「次はどれをやろうかな」とわくわくしながら花火を選んでいました。線香花火にもみんなで挑戦しました。少し風が強くてなかなか火をつけるのが大変でしたが、花火の火が落ちないようにじっくりと見つめていました。線香花火の独特な雰囲気を味わっていました。


最後には打ち上げ花火をしました。色とりどりの光があがると、子どもたちから歓声が上がりました。「もっと見たい!」という声も上がるほど、とても楽しんでいる様子でした。
花火が終わると、デザートのドーナツを食べました。ミニオンが描かれた3種類のドーナツを選ぶ順番を決めるために、じゃんけん大会をしました。勝った子どもは嬉しそうにドーナツを選んでいました。負けてしまった子どもも、早くドーナツを選ぶためにやる気に満ちていました。そうして全員がドーナツを選び終えて、いただきますをしました。子どもたちは「夜にドーナツを食べることが出来て幸せ!」と、とても嬉しそうな様子でした。
みんなで花火を楽しんだ夏の夜は、大切な思い出の1ページになりました。(瀬戸直美)

8月10日

生き物探し

2日目は手作りの朝食を作りました。早起きをしてレタスやきゅうりを切り、たまごを焼き、ソーセージを茹でました。チーズやロールパン、牛乳やジュースもお皿に並べると、素敵な朝ご飯になりました。子ども達は1日目にたくさん遊んだ影響で眠そうにしていましたが、朝ご飯を食べると元気な子ども達に戻っていました。
朝ご飯を食べた後は田んぼや池で生き物探しを行いました。虫に刺されないようにするため、服装は長袖、長ズボン、長靴を履き、車で5分くらいの場所に向かいました。やまさぁーべの方から池の生き物を探す方法を教えて頂きながら網を使って集めていきます。生き物を見つけている最中には生き物の名前を伝えず、宿に戻ってきてから自分たちで協力しながら図鑑を使って調べます。結果はカエル、ゲンゴロウやカマキリ、ギンヤンマ、ドジョウなど全18種類を見つけました。イモリはお腹が赤く、珍しいアカハライモリを見つけた子もいました。18種類の中には絶滅危惧種に指定されている、福島県や神奈川県では発見することが難しい生き物も見つけることができました。虫が好きな子もおり、子ども達は終始楽しそうにしていました。


生き物探しの後は山形県の郷土料理である、ひっぱりうどんを食べました。納豆、鯖缶、ツナ缶、長ネギ、麺つゆを混ぜたものにうどんをつけて食べます。ひっぱりうどんの由来は鍋からうどんをすくい上げることや、納豆の糸を引く様子からきているものです。ツナや鯖缶の汁も一緒に入れることでコクがでて、おいしかったです。子ども達も上手にうどんをつゆに浸しながら、美味しそうに食べていました。
お昼ご飯を食べ終わると、バスに乗って帰ります。途中2箇所で休憩をし、2時間程度で山形県から福島県に移動しました。到着すると、解散式を行いました。ただいまの挨拶をし、私たちとはお別れです。バスの中では、楽しかった、という声を聞くことができ、嬉しかったです。1年ぶりに会う子ども達の姿は大きく成長していました。昨年、神奈川で一緒に遊んだ思い出を話してくれる子もおり、一つ一つの経験が子ども達の成長につながっているのだと感じました。来年はさらに大きくなった姿が見られるのではないかと考えると、今から楽しみです。(小林真子)
                              

3月9日-10日:福島スタディツアー

「こらっせ」ユースの大学生10人、「こらっせ」の若いスタッフ2人と一緒に総勢13人で、福島スタディツアーに行ってきました。お天気には恵まれましたが、風がとても冷たく残雪もあり、寒くて震えました。
若い人を対象に2022年からスタートした「こらっせ」の福島スタディツアーは今年で4回目ですが、今回の案内人は「子ども被ばく裁判」原告団長の今野寿美雄さんということもあり、また違った福島を学ぶことができました。

9日は福島市の子ども施設を訪問した後、南相馬市小高の双葉屋旅館に移動。夕方6時からは櫻井勝延前南相馬市長のお話を聞きました。地震と原発事故に首長としてどのように対応したかというお話に学生たちは圧倒されていました。質問が続くので、櫻井さんのお話は1時間の予定が1時間半になり、その後夕食を共にして夜9時半近くまで、若い人との対話が続きました。オーナーが小高の地に根を張ったアクティビストでもある双葉屋旅館の暖かいもてなしに若い人は感激。ここが、福島に心を寄せる方々の常宿になっていることがよくわかりました。
翌日は、南相馬から楢葉まで南下するスケジュール。若い人にフクシマを知ってほしいという今野さんの気持ちもあり、おれたちの伝承館-イノベーションコースト・棚塩産業団地-震災遺構・請戸小学校-伝承館-富岡漁港-楢葉町天神岬-宝鏡寺伝言館と多数の場所を訪れました。私が一番印象的だったのは、イノベーションコースト構想の一部、浪江町の棚塩産業団地の施設群―水素製造工場、水素ステーション、高度集成材製造センター、ロボット・ドローンテストフィールドなど―でした。原発事故の後始末もいい加減で、避難者や子どもたちに十分な保証もせずに、新技術の拠点という名目でゼネコンをはじめとする企業を再び富ませる巨額な投資をここでもおこなっています。


午後は、楢葉出身の「こらっせ」のスタッフ、佐藤聡君が若い語り部として楢葉町を案内しながら自分の被災体験を語ってくれました。当時の子ども目線で語られた物語に学生たちは感動していました。私が物語と同じぐらい心を揺さぶられたのは、農家だった彼の実家に連れていってもらった時のことです。車の中からでしたが、佐藤君の家の周辺の美しさに息をのみました。広々とした畑と田んぼ、そして近くには冬には白鳥が渡来、春には桜並木が美しい上繁岡大堤があります。春が訪れ、緑が豊かになった風景を想像しました。この風景と佐藤君の物語を重ね合わせると、原発事故が福島の人々に何をもたらしたか、少しだけ実感できるような気がしました。
若い人たちにフクシマを知ってもらえたかな、参加者には学校の先生になる学生も多いので将来の教え子にこの体験を伝えてくれるかなと思いながら、そして若い人たちにエネルギーをもらいすぎて少々疲れて終えた福島ツアーでした。(遠野はるひ)